住宅ローンの返済は10年単位に及ぶことが通常です。
新築住宅の購入の現場でよく目にするのが、憧れのマイホームを購入して満足気な奥様と今後始まっていく借金返済にびびるご主人様という構図です。
不動産売買決済の場はおめでたい場ですから、終了のあいさつとして「おめでとうございます」と言って解散することもしばしばですが、これから返済が始まっていくことが確定したご主人様の表情に少しだけ同情してしまうことがあるのは私だけでしょうか。
ご主人様が不安そうな顔になるのは、返済金額が大きいこともさることながら返済期間が長期に及ぶことからでしょう。
通常住宅ローンというものはサラリーマンが毎月のお給料から少しずつ返済していくことを前提に設計されていますので返済期間はおのずと長期にわたります。
しかしながら住宅に関するローンでありながらせっかく借りられたお金をすぐ返してしまう融資があります。一般に「つなぎ融資」と呼ばれるものです。
つなぎ融資とは
住宅ローンの融資が実行されるまでの間に、一時的に借りる別のローンを指します。
つなぎ融資の典型例
①注文住宅を購入して土地だけ先に購入する場合
②融資実行が物件の引渡より後になる場合
③住替えで売却代金を購入資金にする予定だったが売却が間に合わない場合
④財形住宅融資の場合
に必要となることがあります。
財形住宅融資の場合、融資実行は抵当権設定登記の後に行われることがあります。旧債権法では金銭消費貸借契約は要物契約であったため、厳密には抵当権設定登記の後に融資が実行されることは民法上の要件を満たしておらず、判例で諾成的にも消費貸借契約が成立しうることが認められてきたにすぎませんでした。新債権法では書面等による諾成的消費貸借契約が認められているため、この論点は過去のものになりました。なお、いわゆる受領証実行と呼ばれるものについても同様のことが言えます。
いずれも物件の引渡前に資金の支払いが発生するがその額が高額になり融資が必要な場合につなぎ融資となります。
つなぎ融資は、物件の引渡後はその物件を担保に融資された住宅ローンによって弁済されるため、せっかく借りられたのにすぐ返してしまう借金となるのです。
一括返済の可能性が高いといえども抵当権設定登記を行わずに実行されることが多いローンであるため、金利が高い傾向にあります。
司法書士としては抵当権設定登記が発生しないため、深くかかわることはないことが通常ですが、住宅の購入にあたっては一連の流れの中で発生する融資ということもあり知っておくと良い知識になろうかと思います。(つなぎ融資で抵当権設定登記、抵当権抹消登記が発生することもあります。)
以上、せっかく借りたのにすぐ返してしまう借金~つなぎ融資~でした。
お読みいただきありがとうございました。