皆さんこんにちは!司法書士の関良太です!
本記事では死後事務委任契約についてとその限界について記事にします。
1.死後事務委任契約とは
死後事務委任契約とは賃貸物件の退去、施設への利用料の支払い、年金の受給停止、葬儀の執行、納骨など死後発生する事務を、生前意思能力が十分ある時点で、死後事務受任者と委任契約しておくことを指します。
法律的には準委任契約ということになります。(葬儀の執行などは法律行為ではなく事実行為ですので純粋な意味での委任契約とは異なります。民法上準委任契約は委任契約にしたがいます。)
活用すべき事例としては、推定相続人がおらず、死後発生する事務を頼むべき人がいないケースや推定相続人はいるものの関係が芳しくないため、死後発生する事務を頼める人がいないケース、このほか死後事務委任者と推定相続人の宗教が異なることから、葬儀の執行について死後事務委任契約を締結するケースなどがあります。
2.死後事務委任契約の形式
死後事務委任契約は準委任契約です。
準委任契約は委任契約と同じく不様式行為です。
委任契約同様、方法を問わず当事者の意思の合致があれば有効に成立します。
極端な話では生前に口頭でお願いした場合であっても、法律上は有効に成立します。
ただし、後日の紛争を防ぐためにも専門家を受任者とする場合は公正証書で作成する必要があると言えます。
3.死後事務委任契約の限界
死後事務委任契約は事実行為を委任するためのものであるため、財産の処分を含むものについては、遺言書などで残しておく必要があると言えます。
また、死後事務委任契約は生前の法律行為や事務については委任内容ではないため生前の行為については関与することはできません。生前の対策としては、財産管理契約また認知症に備えて任意後見契約などが必要となります。
また死後事務委任契約の受任者は死亡届を提出する権限はありません。
死亡届を提出することができるものは戸籍法に定めがあります。
第八十七条 次の者は、その順序に従つて、死亡の届出をしなければならない。ただし、順序にかかわらず届出をすることができる。
第一 同居の親族
第二 その他の同居者
第三 家主、地主又は家屋若しくは土地の管理人
② 死亡の届出は、同居の親族以外の親族、後見人、保佐人、補助人、任意後見人及び任意後見受任者も、これをすることができる。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000224
以上のとおり、死後事務委任契約の受任者は死亡届を提出する権限がありません。
対して任意後見人、任意後見受任者は提出することができるとされています。
ただし、死後事務委任契約を頼む人の実情を鑑みると、死亡届などを出してもらえそうもないから死後事務委任契約を結ぶのに、その受任者は死亡届を出せないという問題を抱えています。
以上の死後事務委任契約の限界から、生前思い描いていた最期を迎えたい場合は、「遺言」「任意後見契約」「財産管理契約」「死後事務委任契約」のセットが必要となります。
死後事務委任契約は、核家族化の結果生じたおひとり様の増加が原因で生まれた新しい分野の業務です。
遺言など他の制度では補えない事務を取り扱うことから、現在のところの法整備などは十分とは言えません。
このあたりは実績と判例を積み重ねていくことで、死後事務受任者であっても死亡届を出せるようにするなどが必要になってきそうです。
司法書士杉並第一事務所では死後事務委任契約のご相談をうけたまわっております。
初回ご相談は無料です。お問い合わせは下記のお電話番号、またはお問い合わせフォーム、各種SNSより承っております。
以上、「死後事務委任契約の限界について~死亡届が出せないという問題点について~」でした。
お読みいただきありがとうございました。