「弁済」が登記原因にならない権利(根)抵当権について

(根)抵当権抹消登記の原因にご注意!!

試験では当たり前に理解できていたことが実務にでると実は理解できていなかったということは往々にしてあります。

特に抵当権、根抵当権抹消登記の原因については実務に出たての際ひっかかりがちなのではないでしょうか?

実は受験時に穴が開くほど読んだはずのテキストに書かれていることなのですが

ここで改めて確認しておきたいと思います。

1.根抵当権抹消登記の登記原因に使えない!「弁済」

根抵当権の抹消登記の原因に使えないのが「弁済」です。

正確には元本確定前の根抵当権の抹消登記には使えません。

根抵当権の最大の特徴が「付従性がない」ということです。

通常の抵当権は被担保債権を根拠に設定される担保物権です。

債務者に貸し付けたお金が回収できないときに担保として提供されている不動産から回収するための権利ですので被担保債権がなくなれば存在意義がなくなり消滅します。

これが付従性の意味するところです。

対して根抵当権は債権者と債務者で金銭なりの貸付、弁済が継続して繰り返されることを前提に設定される担保物権です。

つまり抵当権のようにいちいち設定して抹消していてはかえって煩雑になってしまうので極度額までは継続的な債権債務関係から生じた債権を担保しましょうというのが根抵当権です。

被担保債権の生成消滅とは独立に存在している担保物権ですので「弁済」が元本確定前の根抵当権の抹消の登記原因となることはありません。

逆に元本確定後であれば「付従性」が生じることから弁済を登記原因とすることもできます。

銀行から渡される書類についてはブランクで渡されることも多く司法書士の方で書き加える必要があることから司法書士は特に注意が必要です。

2.抵当権であっても登記原因に使えない!「弁済」

抵当権の場合であっても「弁済」が抵当権抹消登記の登記原因として使えないことがあります。

それは抵当権の設定の原因が「年月日保証委託契約にもとづく求償債権年月日設定」となっている抵当権の場合です。

この場合の抵当権の関係当事者は3人です。

債権者、債務者、そして保証会社です。

債権者とはプロパーの金融機関つまり債務者に直接お金を貸す銀行です。

債務者とはお金を借りる人。通常は住宅ローンで新しく家を買う人です。

そして保証会社とは債務者がお金が返せなくなった時に債務者に代わってプロパーの金融機関にお金を返す機関を指します。

そして「年月日保証委託契約にもとづく求償債権年月日設定」を登記原因とする抵当権の抵当権者はこの保証会社のことを指します。

登記原因にある「求償債権」とは債務者が債権者にお金を返せなくなった時に保証会社が債権者に対して債務者の代わりに弁済することで債務者に請求できる権利を指します。

通常「年月日保証委託契約にもとづく求償債権年月日設定」の抵当権は債権者がお金を貸し付けた日に設定するため、この抵当権設定当時、被担保債権であるこの求償債権は将来債権ということです。

厳密な意味においてはまだ実現していない債権を担保していることになり、抵当権の基本原則の一つである付従性の原則から外れています。

権利の性質の違いを強調すれば「年月日金銭消費貸借年月日設定」を原因とする抵当権と「年月日保証委託契約にもとづく求償債権年月日設定」を原因とする抵当権は性質が異なる権利であるため別の担保物権の名前を冠していてもおかしくはないと思うのですが名前は同じく抵当権です。

このあたりが余計ややこしいですね。

ここで「年月日保証委託契約にもとづく求償債権年月日設定」の抵当権の抹消登記を申請する場合に登記原因として「弁済」を使うことはできません。

それは被担保債権が将来債権という現実に実現していない債権であるから弁済のしようがないためです。

弁済すべきはプロパーの金融機関に対する債務であり、たとえば金融機関から預かった書類に「年月日債務は弁済により消滅した。」との記載がある場合、登記原因になるのは「年月日主債務消滅」となります。

プロパーに対する債務が弁済されたことで主債務がなくなり求償債権が生じる余地がなくなったことから、被担保債権の生じる可能性がなくなり晴れて抵当権が抹消できる、ということになります。

この他使える登記原因としては「解除」「放棄」などです。

これらの根拠は民法にあります。一般則ですのでたいていの場合使える登記原因です。

以上、(根)抵当権を抹消登記できない登記原因「弁済」でした。

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