皆さんこんにちは!司法書士の関良太です!
本ページでは度重なるオンライン申請ができなくなることについての私見について記事にします。
令和6年3月29日午後、登記供託オンラインシステムがダウンしました。
これにより、オンラインによる登記申請をすることができなくなりました。
事が重大なために、法務局は本来5時15分閉庁であるにも関わらず、8時まで開庁という異例の取り扱いとなりました。
この事態は特にニュースなどになることもなく、世間の耳目を集めることにはなりませんでした。
みずほ銀行などは度重なるシステムダウンで、ニュースなどで大々的に取り上げられるのと比較すると何とも寂しい思いが致します。
登記の申請がオンラインでできなくなったと言われても、事の重大さに気づける方はそう多くはないと思います。
オンライン申請することで、たとえ提出すべき法務局が沖縄などであっても、東京の司法書士が担当することができるようになります。
この日全国の司法書士は、何とか当日中に申請できないかと、方々走り回っており私の司法書士のライングループも大混乱の様相でした。
しかしなぜ司法書士はこうも当日申請にこだわるのでしょうか。
不動産の名義書換えに、緊急性はそうないという意見もありそうです。
確かに不動産登記が単なる名義書換え手続きであればそうかもしれません。
しかし登記は単なる名義書換えではありません。
その答えは民法177条にあります。以下、根拠条文です。
(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
第百七十七条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
e-Govより https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
この条文の意味するところは、不動産が売買された場合に売買対象不動産の所有権の移転は売主買主の関係では、登記をしなくても買主は売主に対して自身が不動産の所有権を主張することができますが、契約当事者ではない第三者の関係では、登記をしない限り自身が買主であると主張することができない、と言っています。
つまり、登記が未了の間は買主の権利は非常に不安定であると言えます。
さらに困ったことに、売主が買主に不動産を売却したにも関わらず買主が登記を怠り、売主が別の第三者に売却してしまい、その第三者が登記も済ませてしまった場合どうなるでしょう。
この場合、確定的にその不動産の所有権を取得するのは後で不動産を購入した第三者となり、前に購入した買主はその第三者に自身の権利を主張することはできません。
このあたり第一売買で所有権は買主に移転しているのに、第二売買で登記さえ済ませてしまえば第二売買の買主が確定的に権利を取得できるとするのは、疑義の多い部分です。
果たして第二売買で移転した権利の実体は何なのかはおそらく学者も頭を悩ませる部分ではあるとは思います。
ともあれ裁判所は登記を済ませた方に味方します。
だからこそ、司法書士は買主の権利の保全のために3月29日に走り回っていたのです。
そもそもオンライン申請は、国民の利便性を高めるために導入された一面もありますが、裏の理由としては、法務局のコストカットの面も大きな理由だと思われます。
事実私が前勤めていた司法書士事務所では、わざわざ法務局の上席が事務所に出向いてオンライン申請に協力してくれないかお願いされたと聞きます。
こうして導入されたオンライン申請システムですが、こうしたシステムダウンが繰り返されれば、権利の保全にうるさい金融機関の要請によって、オンライン申請をNGとされる恐れがあります。
こうなると司法書士としては紙での申請にならざるを得ず、時代に逆行することとなります。
望めるものならこうした事実をニュースなどで取り上げて、もっと国民に知ってほしいなあと贅沢かもしれませんが願わずにはいられません。
以上、「度重なる障害でオンライン申請ができないことについて【司法書士の困った話】」でした。
お読みいただきありがとうございました。