買主側なのに売主の抵当権抹消登記に協力しないといけない!?「持分とする変更登記」とは?

皆さんこんにちは!司法書士の関良太です!

不動産売買の契約では、通常買主は完全な所有権を取得することを売買契約書に盛り込みます。つまり売主にまだ住宅ローンなどが残っている場合については、抵当権などを抹消して綺麗な状態にしてから買主に引き渡します。

これは売買契約書に盛り込まれているほか、通常の商慣習の感覚から言っても当然のことでしょう。

登記実務の場合、抵当権抹消登記の登記権利者は売主、登記義務者を抵当権者とするパターンがほとんどです。

しかしこれには例外があり、買主であっても売主が借りたお金についての抵当権抹消登記について協力しなければならない場合があります。

それはいわゆる「持分とする変更登記」を行う場合に必要となります。

本ページではその例外事例について記事にします。

実際の例をあげてご紹介します。

典型例は新築戸建ての分譲の際に私道の持分も一緒に売買の対象になっている時です。

例えば、売主の不動産会社Xが持っている不動産にA、B、Cという土地があったとします。

AとBが新築の建物が建っている本地、Cが私道であったとします。

また、このA、B、Cの3つの土地には売主が物件を買った時に設定された共同担保になっている抵当権があるとしましょう。

この場合の登記情報は以下のようになります。

A・B・C土地について不動産会社X所有、不動産会社Xがこの分譲地を仕入れる際にY銀行から融資を受けており、そのすべての土地に抵当権が設定されている状態。

この際に買主aが本地A100%と私道Cの50%を買ったとしましょう。

私道Cについては本地Bを買った人が後日、私道Cを使えるように売主不動産会社Xが残る50%を所有しておきます。

本地Bと私道Cの50%については、後日別の買主が買った際の購入代金で弁済して、抵当権を抹消登記する予定だったとします。

つまり本地Bと私道C50%の抵当権については抵当権はそのままいじらず設定されている状態にしたいものとします。

この場合にAの土地について所有権移転登記をする際は、まず抵当権抹消登記を行ってから所有権移転登記を行うべきです。この流れはよくある不動産登記です。

次に私道であるCの土地の所有権の一部を移転したい場合ですが、例えばC土地の50%を買主aに移転する場合を考えてみましょう。

この場合になすべき登記は「所有権一部移転登記」です。

所有権一部移転登記をした後は以下のようになります。

ここで問題なのが抵当権の登記についてです。

このままだと、aが購入したC土地の持分についてX社が借り入れた際の抵当権が残ったままになってしまいます。

目指すべき完成後の登記簿は本地Aについては抵当権がない状態、本地Bについては抵当権が残っている状態、私道Cについてはaが買った部分については抵当権がない状態、私道Cのまだ売れていない部分についてはY銀行の抵当権が残っている状態にしたいわけです。

つまり私道Cについては抵当権の一部抹消登記を行う必要があるのです。

しかし不動産登記法上「一部抹消登記」という手続きは存在しません。

ではどうするのか?

そこで登場するのがいわゆる「持分とする変更登記」と呼ばれるものです。

この「持分とする変更登記」は、不動産全体に及んでいた抵当権などの権利をその不動産の一部に及ぶように変更する登記です。

つまり行うべき登記の手順は以下のとおりとなります。

①A土地に設定されていた抵当権の抹消登記(得するのはX社、損するのはY銀行)

②A土地の所有権移転登記(X社→a)

③C土地の所有権の一部の移転登記(X社→a)

④C土地全体に及んでいた抵当権をX社の共有持分に変更する登記(得するのはa、損するのはY銀行)

以上の登記をすることによって以下のイメージ図の状態になります。

こうして目的とする登記簿の状態となりました。

ここでのポイントは、④の手続きにおいて誰が権利者となるか(登記手続きをするに際し誰が得をするか)という点です。

というのも通常の登記手続きであれば、抵当権抹消登記をする場合、売主が権利者となります。

しかしこの「持分とする変更登記」に際しては、権利者は買主です。

つまり、売主と銀行側ですべきであった担保権の抹消登記を、なぜか買主が負担しているということとなります。

よって司法書士の目線からは「持分とする変更登記」をするに際し、委任状をもらうべきは売主ではなく買主となります。

ただしこれは事実上抵当権の一部抹消登記ですので、この「持分とする変更登記」の登記費用は売主が負担することが通常です。

なおこの後B土地が購入された場合は、C土地については通常どおり抵当権抹消登記と持分の移転登記がなされます。

この流れは通常の抵当権抹消登記→所有権移転登記とする、通常の流れと同じです。

こういったケースの分譲地では、最後の売買は通常の登記の流れと同じになります。

また不動産登記実務上、こういったテクニカルな登記の部分について銀行側は全く関知しておりません。

当然のように「一部抹消登記してください」と言われますし、銀行側から預かる解除証書には、こういった「持分とする変更登記」をするにあたって、登記に耐えうる書類は提供してもらえません。

したがって司法書士の方で銀行に確認の上、解除証書に補記することとなります。

以上、「買主側なのに売主の抵当権抹消登記に協力しないといけない!?「持分とする変更登記」とは?」でした。

お読みいただきありがとうございました。

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