皆さんこんにちは!司法書士の関でございます。
本ページでは、私が過去難儀した本人確認について記事にします。
なお一部脚色の上、記事にします。
多くの不動産売買決済では、売主様と買主様が銀行などに一堂に会して、残代金の支払いとともに買主様の権利の保全のため、当事者双方の本人確認、意思確認、登記の書類確認を行います。
しかし場合によっては売主様が老人ホームに入居されていることなどから、決済の場に出てくることがかなわないことがあります。
しかし、上記の確認は司法書士がかならず行う必要があるため、代替策として司法書士は事前に売主様のいらっしゃる老人ホームにお伺いして、上記の確認をするという方法をとることがあります。
特に売主様が老人ホームに入居されているという点は、非常にシビアに意思確認をする必要があります。
例えば認知症などの場合には、本人が売却の意思表示ができない、または有効な意思表示とは考えられないケースがあり、その場合には後見人が本人に代わって意思表示するなどが必要となります。
ここで私の経験からとても判断に困った事例を共有します。
老人ホームに入居されていた方の不動産のご売却事例でした。
年齢は80代後半で、意思能力の具合によっては売却も難しくなるかもしれないという思いで老人ホームへおうかがいいたしました。
ご挨拶をしたところ反応が芳しくありません。
これは認知症などで状況を理解していないのかな・・・?と思わざるを得ない状態でした。
ひとしきり説明をしても「???」といった具合で、売却断念もやむなしと思っていたところ、立ち会っていたヘルパーの方の助け舟で、「極力ゆっくり大きな声で低めの声でお話ししてみてください。」とのこと。
試しにそのとおりに行ってみると、氏名・住所・生年月日・干支・不動産の周囲の状況や取得の経緯などをはっきりとお答えになりました。
また登記についてもいくつかご質問いただき、ご質問内容も論理的でお答えした回答をしっかりとご理解いただけたようでした。
どうやらかなり耳が遠いお方なだけであって、結局のところ意思能力は全く問題のないお方でした。
もし私ひとりで意思確認を行っており、耳が遠いだけというヘルパーの方の助け舟がなければ、意思能力なしとして登記をお断りせざるをえない可能性があるケースでした。
こうなるとご本人に売却の意思があり、不動産仲介会社の方が手を尽くしたのに予定日までに売却できない、というまずいケースになります。本来適法に売却できるのに司法書士がそれを阻害してしまっているためです。
老人ホームにご入居されている方のご事情は本当に様々です。
同じ年齢の方でもこれほどまでに意思能力に違いがあるものかと驚かされることもしばしばです。
今後はあまり先入観をもたず、周りのご親族の方やヘルパーの方など身近な方からの情報も加味したうえで、本人確認の方法を工夫する必要があるなと感じた事例でした。
以上「本人確認の難しさについて~老人ホームに入居しているので事前に本人確認したケース~」でした。
お読みいただきありがとうございました。