皆さんこんには!司法書士の関良太です。
先日ご相談いただいた方で少しびっくりしてしまったことがあったため記事にします。
なお一部脚色を含みます。
葬儀社からのご紹介のご相談でした。
奥様を亡くされた90代の男性の方の相続登記を弊所で行ったため、登記識別情報のご説明のため、お自宅へお伺いいたしました。
そこで、その90代の男性の方のご親戚のお話になり、「親戚が相続でもめそうだから相続発生前に不動産の名義を変えたい」とおっしゃいました。
このお話をうかがった際、今のうちに贈与なりで不動産を譲っておきたい、という意図かと思ったため、「不動産の贈与の登記を今のうちから入れておきたい、ということでしょうか?この場合、税金の問題が発生するのですが一般的には相続税の方が安いはずですよ。私の知り合いの税理士に相談してみましょうか?」とお伝えしました。
ところがその90代の男性の方は、「贈与にはしたくない。テレビで不動産の名義だけ相続登記できると言っていた。」とおっしゃいました。
これは困った事態になりました。
当然不動産登記は実体法上の権利の状態を公示する制度ですので、死亡前に相続登記などは入れられません。
私は、「登記というものは、何かの原因があって不動産の所有者が変わった際に登記するものですよ。贈与だとか売買だとか、とにかく所有者が変わった根拠が必要になります。」とお伝えしました。
90代の男性の方は「でもテレビでやっていたし、知り合いもそれでやったはず。」とおっしゃるのでした。
そこからしばらくご説明を試みたのですが、なかなかご納得いただけませんでした。
しばらくのお話合いのなかで段々と分かってきたことなのですが、どうやら「相続時精算課税」の制度を誤解されて、相続前に相続登記が入れられると勘違いされていたようです。
司法書士の言葉よりも10分程度のテレビの解説の方が信ぴょう性をお持ちだという事実に少しショックを受けましたが、テレビは比較的難しい話題を簡単にして説明しがちですし、ある一定の年代より上の方はテレビに絶大な信頼を置いていらっしゃる方も多いようです。
その後「相続時精算課税」の概要をお伝えしたのですが、最後までご納得いただけませんでした。
こういった際に、私の説明力不足を実感します。
信頼と知識というものは国家資格の最大の価値だったはずだと思うのですが、むなしくもテレビの力を前にして、お話は並行線のまま終わってしまいました。
少し苦い経験となってしまいました。
以上「お客様に正確に情報を伝えることの難しさについて~「相続前に相続登記を入れられると聞いたのですがどうしたら良いですか」というご相談~」でした。
お読みいただきありがとうございました。