【相続発生!すぐにまとまったお金が必要です】遺産分割前に預貯金の払い戻しはできますか?【相続財産の一部をすぐ使いたい】

皆さんこんにちは!司法書士の関良太です。

先日ご相談いただいたお客さまで、遺産分割前であっても預貯金の払い戻しができるかご質問いただきましたので記事にします。

Q. 遺産分割前に預貯金の払い戻しはできますか?

A.相続財産にあたるため原則的には払い戻しはできませんが、一定の要件や条件のもと払い戻しができます。

被相続人(亡くなった人)の預貯金は、遺産分割の対象であるとされていることから、遺産分割協議前に相続人の単独名義での預貯金の払い戻しはできない、とされています。

しかし、相続開始後は葬儀費用や入院費などの清算があることから、被相続人が有していた預貯金からの支払いが必要なケースもあることを想定して、家事事件手続法による預貯金の仮分割仮処分の制度や預貯金の一部払い戻し制度を活用することで、預貯金の払い戻しを認めてもらうという方法があります。

1.家事事件手続法による方法

家庭裁判所による手続きを踏むことで、遺産分割協議成立前に預貯金の払戻をすることができます。

以下根拠条文です。

(遺産の分割の審判事件を本案とする保全処分)

家事事件手続法第二百条 家庭裁判所(第百五条第二項の場合にあっては、高等裁判所。次項及び第三項において同じ。)は、遺産の分割の審判又は調停の申立てがあった場合において、財産の管理のため必要があるときは、申立てにより又は職権で、担保を立てさせないで、遺産の分割の申立てについての審判が効力を生ずるまでの間、財産の管理者を選任し、又は事件の関係人に対し、財産の管理に関する事項を指示することができる。

 家庭裁判所は、遺産の分割の審判又は調停の申立てがあった場合において、強制執行を保全し、又は事件の関係人の急迫の危険を防止するため必要があるときは、当該申立てをした者又は相手方の申立てにより、遺産の分割の審判を本案とする仮差押え、仮処分その他の必要な保全処分を命ずることができる。

 前項に規定するもののほか、家庭裁判所は、遺産の分割の審判又は調停の申立てがあった場合において、相続財産に属する債務の弁済、相続人の生活費の支弁その他の事情により遺産に属する預貯金債権(民法第四百六十六条の五第一項に規定する預貯金債権をいう。以下この項において同じ。)を当該申立てをした者又は相手方が行使する必要があると認めるときは、その申立てにより、遺産に属する特定の預貯金債権の全部又は一部をその者に仮に取得させることができる。ただし、他の共同相続人の利益を害するときは、この限りでない。

 第百二十五条第一項から第六項までの規定及び民法第二十七条から第二十九条まで(同法第二十七条第二項を除く。)の規定は、第一項の財産の管理者について準用する。この場合において、第百二十五条第三項中「成年被後見人の財産」とあるのは、「遺産」と読み替えるものとする。

家事事件手続法 | e-Gov法令検索

該当するのは3項の部分です。

要件をまとめると以下のとおりです。

①家庭裁判所における遺産の分割の審判または調停の申立てをすること

②遺産にかかる預貯金について相続人が使う必要性があること(債務弁済・生活費)

③相続人の申立てがあること

④他の相続人の利益を害しないこと

以上の記載からわかるとおり、この条文の射程は被相続人の預貯金としており、それ以外の財産については原則通りの取り扱いとされます。

2.預貯金の一部払戻制度

近時の改正により、各共同相続人は預貯金のうち相続開始時点での3分の1に法定相続分をかけた金額については、他の相続人の同意なく単独での払戻ができるようになりました。

以下、根拠条文です。

(遺産の分割前における預貯金債権の行使)

民法第九百九条の二 各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の三分の一に第九百条及び第九百一条の規定により算定した当該共同相続人の相続分を乗じた額(標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式の費用の額その他の事情を勘案して預貯金債権の債務者ごとに法務省令で定める額を限度とする。)については、単独でその権利を行使することができる。この場合において、当該権利の行使をした預貯金債権については、当該共同相続人が遺産の一部の分割によりこれを取得したものとみなす。

民法 | e-Gov法令検索

以上から、民法上は)法定相続分)×(3分の1)までは単独で取得できるとしております。

この条文を根拠とした払戻は家庭裁判所での手続きを不要としており、相続に際して突発的に発生する支払いをするにあたって、使いやすくなるよう条文が作られております。

加えて、行使した分については、遺産分割によって取得したものとみなすとする強い規定があり、遺産分割協議を必要としておりません。

ただし、民法にもあるように法務省令による限度額が定められており、金融機関ごとで150万円とされております。なお金融機関ごとでカウントするため同一金融機関で複数口座ある場合でも、その金融機関からは150万円までしか取得できません。

この上限の設定は葬祭費や入院費の支払いを支弁するためという通常想定されうる目的に適うようにしており、権利の濫用を防いでおります。

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